工場はラインのオペレーター(作業員)だけで成り立つわけではありません。間接部門のスタッフが工場内にいます。
具体的には総務、購買、生産計画(生産管理)、労務、品質保証(品質管理)、技術部門、設備・保全、安全防災関連の部署です。これらの間接スタッフは、大卒半分、高卒以下半分といった人員構成であります。課によって異なりますが、技術部門は特に高度な数学や物理などの専門知識も必要ですので、大卒組が多めです。
これらの間接部門の中での大卒出身の総合職の役割は、工場内での司令塔、本社部門との橋渡し役が業務内容となります。司令塔とは、高度な判断を求められたり、課題に対しての改善策を打つなどの役割です。多少のルーチンワークもありますが、どちらかといえばそれは、地元採用の高卒組の業務となります。大卒総合職にはもっと高度な業務が割り与えられており、創造的な仕事、問題解決的な仕事を任されます。現場のライン長などとの調整役なども行います。
例えば品質保証のスタッフだった場合、大卒組スタッフの役割としては、本社から伝えられてくる市場クレームの調査や再発防止策を主導し、各製造現場に働きかけたり、技術部門と調整をしたりして有効な対策を立てていきます。また工場内でいかに不良品やトラブルを出さずに製造するかというQAレベルの改善も求められております。具体的には毎年予算が品質保証部門に割り与えられ、部材照合のシステムを入れるとか、トレサビリティのシステムを入れて、ロット追跡を可能にするとか、高度なインフラ改善も主導しなければなりません。
品質保証の部署自体には、設備改善とか技術改善の固有技術はありませんので、工場内の製造課の詰め所の休憩所兼会議室に関連するメンバーを招集して、様々な観点(つまりは生産性、安全、品質、コスト)から検討して、最適なシステムを作り上げなければいけません。製造課には使い勝手や、作業同線などがこれでよいのか、ヒアリングしたり、事前に現場を見に行って自分で確かめる必要があります。設備改善や新しい機材、システムを導入したかったら、仕様書みたいなものを細かく作り、設備課の人に説明をして納得してもらい、その人たちに作ってもらう必要があります。
予算を獲得したり使用する場合には、稟議書のようなものを作成して、工場内の各部署の課長や場合によっては工場長への説明も必要となります。これらを主導するのも役割です。納期も決まっているので、段取りよく進めていかないと、どんどん時間が過ぎて年内に予算を消化できないまま終わってしまうなんてこともあるので、計画的な行動が求められます。また製造現場でレイアウトを変えたり、新しい設備を導入する場は、工事が必要ですので、その間はそのマシーンは、製造を止める必要がでてきます。
そのため、品証スタッフは製造ラインの課長などと調整をして、いつ生産を止めておこなうかという調整業務も発生してきます。
これだけにはとどまりません。工場というのは、毎日大小はあれ、さまざまな生産中のトラブルが発生するものです。トラブルは昼夜問わず突如起きるものです。例えば製造中に材料の色や肌がおかしいとか、異物が混入してしまったとか、携帯に現場の班長から突然電話がかかってきて、品証スタッフにこの後どうしたらよいか、判断が求められます。この場合、品証スタッフは現場をすぐ見に行き、事実を確かめて生産を続行させるか、一旦止めて確認するか、流してしまった中間部材を保留するか、どこまで止めるかなど、確認や判断、指示を出さなくてはいけません。一度大きなトラブルが起きれば、出荷を止めたりとかも必要なので、長時間の残業が発生する場合もあります。
このように大卒総合職で工場勤務を経験する場合は、いろんな意味で鍛えられます。